この記事の結論
- 独身向けのMLC算出法(01-07)をそのまま使うと、家族持ちの場合は現実の生活費より小さく出てしまう
- 家族持ちのMLCには「配偶者の生活費」「子どもの教育費」「家族向けの保険」の3つを追加で組み込む必要がある
- 教育費は子どもの年齢・就学状況によって金額の桁が変わるため、現在の状況に合わせた概算を出すのが現実的
- 配偶者への説明は「金額の正しさ」より「一緒に計算した」という手順そのものが理解を得る近道になる
「最小生存コスト(MLC)」の算出法を扱った01-07を読んで、実際に自分の数字を計算してみた家族持ちの読者から、同じような感想をよく聞きます。
「独身のときの感覚で計算したら、うちの生活費より明らかに少ない金額が出た」というものです。
実際、01-07の支出カテゴリ表(住居費・ライフライン・食費・通信費・保険)は、単身者を前提にした組み立てになっています。
配偶者や子どもがいる場合、ここに「配偶者の生活費」「子どもの教育費」という、単身者には存在しない支出カテゴリが丸ごと追加されます。
また、脱出後のリアルQ&A②(473)のQ5「貯金がほとんどなくて、動くのが怖いです」では、「最小生存コスト(01-07)を先に算出しておくと、無理に貯金を作ろうと焦らずに済む」と紹介していますが、この助言も家族がいる場合は前提となる数字そのものを組み替える必要があります。
この記事では、配偶者・子どもがいる現場作業員が、家族版のMLCをどう算出すればいいかを、具体的な金額の目安とあわせて解説します。
1. 単身MLCに「そのまま人数を掛ける」だけでは足りない理由

家族がいる場合のMLCを考えるとき、多くの人が最初に考えるのは「食費や住居費を人数分増やせばいいのでは」という発想です。
もちろんそれも必要ですが、それだけでは家族持ちのMLCとしては不十分です。
単身者のMLC表には存在しない、次の3つのカテゴリが新たに必要になります。
- 配偶者の生活費:配偶者が専業か共働きかにかかわらず、衣類・美容・交際費など個人の支出が積み上がる
- 子どもの教育費:保育料・給食費・学用品・習い事など、年齢によって金額の桁が大きく変わる
- 家族向けの保険:単身者の掛け捨て保険とは別に、学資保険や家族型の医療保険が必要になるケースがある
2. 家族構成別・MLC早見表(目安)

あくまで一例ですが、家族構成ごとにどの程度MLCが変わるのか、大まかな目安を出してみます。
地域や住居形態(賃貸・持ち家)によって住居費は大きく変わるため、ここでは住居費8万円・ライフライン込みの想定で計算しています。
| 家族構成 | 追加で見込む主な支出 | MLCの目安(月額) |
|---|---|---|
| 夫婦のみ | 配偶者の生活費・食費2人分 | 18万円前後 |
| 未就学児1人 | 保育料(自治体・世帯収入で変動)、オムツ等の育児用品 | 21万〜23万円前後 |
| 小学生1人 | 給食費、学用品、学童保育費 | 20万〜22万円前後 |
| 中学生・高校生(公立)1人 | 部活動費、通学費、修学旅行積立 | 23万〜26万円前後 |
子どもが2人以上いる場合は、教育費と食費の部分をそのまま人数分積み増して考えてください。
重要なのは正確な数字を出すことより、「今の自分の家庭なら大体このレンジ」という実感を持つことです。
3. 教育費をどう見積もるか
教育費は家族版MLCの中でもっとも読みにくい項目です。
文部科学省の調査などで公表されている目安を参考にすると、公立中心で進学した場合、学校教育費・給食費・学校外活動費(習い事等)を合わせて、おおよそ次のようなレンジになると言われています。
公立中心で進学した場合の年間目安
- 公立小学校:年間30万円台前半
- 公立中学校:年間50万円前後(部活動費が加わる分、小学校より高くなる傾向)
- 公立高校:年間50万円前後
これを12か月で割ると、月あたり2万5,000円〜4万円程度が目安になります。
ただし習い事の数や塾の有無で大きく変動するため、「うちは習い事を増やすつもりがあるかどうか」だけでも先に家族で決めておくと、教育費の見積もりがブレにくくなります。
私立進学や中学受験を検討している場合、この金額はさらに大きく跳ね上がります。
その場合はMLCとは別に「教育資金計画」として切り分け、学資保険や積立とセットで考えることをおすすめします。
4. 配偶者の理解をどう得るか
家族版MLCを計算し終えたあと、次に必要になるのが配偶者への説明です。
ここで陥りがちな失敗は、「脱出したい」という気持ちが先走り、まだ何も決まっていない段階で転職や独立の話を切り出してしまうことです。
脱出後のリアルQ&A②(473)のQ6「家族に『今の仕事のままでいい』と反対されています」でも触れているとおり、家族の反対の多くは変化そのものへの不安から来るものです。
言葉で説得しようとするほど話がこじれやすいのは、家族版MLCの相談でも同じです。
効果的なのは、結論ではなく「一緒に数字を出す手順」を共有することです。
- 「将来が不安だから、一度うちの生活費を一緒に計算してみたい」と、結論ではなく提案として伝える
- 通帳やレシートを一緒に見ながら、この記事の早見表を使って家族のMLCを実際に計算する
- 算出した金額を見て、「今の収入なら最悪でもこのラインは守れる」という共通認識を作る
配偶者にとって一番の不安は「金額が分からないこと」であり、それは働く本人が抱えていた不安とまったく同じ構造です。
数字を一緒に見る作業そのものが、説得より先に不安を減らしてくれます。
今日のアクション
- この記事の早見表を参考に、自分の家族構成に近いパターンのMLCを仮計算してみる
- 教育費だけは「今かかっている金額」と「今後増える可能性がある金額」を分けて書き出す
- 結論を伝える前に、配偶者に「一緒に計算してみたい」と提案する


コメント