この記事の結論
- 現場で蓄積した腰・膝の負担は、内勤に移っても急には消えない
- デスクワークには「座りっぱなし」という現場とは別種の負担があることを知っておく
- 痛みが続く・悪化する場合は、我慢せず整形外科などの専門家に相談する
身体の減価償却の記事では、40代・50代で訪れる体力の不可逆な低下について触れました。
ただ、実際にデスクワークへ移った後も、現場で蓄積した腰や膝の負担がすぐに消えるわけではありません。
この記事では、内勤に移行した後の体との付き合い方を整理していきます。
1. なぜ内勤に移っても、体の痛みがすぐには消えないのか
長年の現場仕事で蓄積した腰・膝への負担は、筋肉や関節の使い方の癖として体に染みついています。
デスクワークに切り替えた瞬間から症状が改善するわけではなく、むしろ環境の急な変化に体がついていけず、違和感が続くケースも珍しくありません。
これは怠けているわけでも、転職の判断が間違っていたわけでもありません。
長年かけて蓄積された負担が、短期間で解消されるとは考えにくいという、ごく自然な話です。

2. デスクワークで新たに負担がかかる部位
現場仕事とデスクワークでは、体にかかる負担の種類がまったく違います。
現場は「動きすぎる負担」だったのに対し、デスクワークは「動かなさすぎる負担」が新たに加わるという逆方向の変化です。
- 座りっぱなしによる腰・股関節への負担:立ち仕事中心だった体が、長時間の座位に慣れていない
- 猫背・前傾姿勢による首・肩への負担:パソコン画面を見続ける姿勢が新たな凝りを生みやすい
- 運動量の急激な低下:現場で消費していた運動量が減ることで、逆に体重増加や筋力低下が進むこともある
座りっぱなしの負担は、実際の生活パターンの変化として見るとイメージしやすくなります。
現場作業では、資材の運搬や移動、立ったりしゃがんだりの動作を含めて、1日1万歩前後歩いていた人も少なくありません。
それが内勤に移ると、デスクを離れるのは休憩とトイレくらいになり、1日の歩数が3,000歩前後まで落ち込むケースも珍しくないといわれています。
負荷のかかる向きも大きく変わります。
立ち仕事では、重いものを持ち上げる瞬間などに腰椎へ一時的に強い負荷がかかる一方、姿勢を変えたり歩いたりすることで、同じ場所に負荷が集中し続けることは少なめでした。
座位では逆に、重い負荷が一度にかかることはない代わりに、同じ姿勢で腰椎に軽い負荷がかかり続ける状態が8時間近く続きます。
この「負荷は軽いが途切れない」タイプの負担が、内勤に移ってから新たに増えるものだと考えておくとよいでしょう。
首・肩への負担も、現場時代とは質が異なります。
現場では周囲の安全確認のために視線が常に動き、首も一緒に動いていましたが、デスクワークではパソコン画面という一点を、うつむき加減の姿勢で何時間も見続けることになります。
視線と首の動きが固定されるほど、首の付け根から肩にかけての筋肉が緊張し続け、いわゆる肩こりや頭痛につながりやすくなります。
運動量の低下も見過ごせません。
現場仕事では、資材の上げ下ろしや長時間の立ち仕事そのものが一種の全身運動になっていましたが、内勤ではその運動量がほぼゼロになります。
同じ食事量を続けていると体重が増えやすくなるだけでなく、使わなくなった筋肉から先に落ちていくため、久しぶりに体を動かしたときに思った以上に膝や腰への負担を感じることもあります。
3. 職場でできる小さなセルフケアの工夫
大がかりな運動やジム通いを始める必要はありません。
職場でできる、小さな工夫の積み重ねだけでも負担は変わってくると言われています。
1時間に1回、椅子から立ち上がって少し歩く・軽くストレッチするだけでも、座りっぱなしによる腰への負担は変わってくるとされています。
タイマーやリマインダーを使って、意識せずとも体を動かすきっかけを作っておくとよいでしょう。
モニターの高さや椅子の座面調整も、地味ですが効果が積み重なるポイントです。
モニターの上端が目線と同じ高さにくるよう調整するだけで、首の前傾姿勢がかなり軽減されます。
会社によっては、クッションや昇降デスクなど、簡単な備品の貸与・購入補助を受けられる場合があります。
相談する際は「体調が心配だから」ではなく、「作業効率を落とさないための環境調整」という切り口で伝えると、総務や上司も予算を通しやすくなります。
たとえば「長時間座る姿勢が続くと集中力が落ちるので、モニタースタンドか椅子のクッションを検討したい」というように、体調ではなく業務上の理由を添えて切り出すと、単なるわがままではなく合理的な要望として受け止めてもらいやすくなります。

4. 痛みが続く・悪化する場合の相談先
セルフケアを続けても痛みが引かない、あるいは悪化していく場合は、我慢せず専門家に相談することが基本です。
ただし「どこに相談すればいいか」は、症状の種類や状況によって変わってきます。
整形外科を検討したいケース
特定の部位(腰・膝・肩など)にズキズキとした痛みやしびれがあり、数週間セルフケアを続けても改善しない、あるいは悪化している場合は、整形外科の受診を検討します。
レントゲンやMRIで原因を特定したうえで、リハビリや治療の方針を相談できるのが強みです。
「動いた瞬間に電気が走るような痛みがある」「安静にしていても痛みが引かない」といった症状は、セルフケアだけで様子を見るより先に、専門家に診てもらった方が安心です。
産業医・会社の健康相談窓口を使いたいケース
痛みそのものより、「今の座り方や仕事量が体に合っているのか自分では判断がつかない」「会社に相談しづらい」といったモヤモヤが強い場合は、産業医や健康相談窓口の出番です。
一定規模以上の会社であれば産業医への相談制度が用意されていることが多く、就業時間の調整や配置の相談にもつながりやすい窓口です。
産業医は治療をする場所ではありませんが、会社側に「無理のない働き方」を提案してもらえる、社内で唯一の医療的な立場の相談先だと考えておくとよいでしょう。
労働基準監督署が選択肢になるケース
現役の現場時代に労災認定を受けた既往症があり、その症状が内勤に移ってから再発・悪化している場合は、業務に起因する可能性を含めて考える必要があります。
こうしたケースでは、労働基準監督署への相談も選択肢になります。
「これくらいで相談していいのか」と迷う必要はありません。
判断は窓口側が行ってくれるので、まずは事実を伝えるところから始めれば十分です。
「現場を離れたのだから、もう体のことは気にしなくていい」わけではありません。
長年働いてきた体への敬意として、無理せず付き合っていく意識を持っておくと、内勤生活も長く続けやすくなります。
今日のアクション
- 1時間に1回、立ち上がって軽く体を動かすタイマーをセットしてみる
- モニターの高さ・椅子の座面が自分の姿勢に合っているか確認する
- 痛みが続いている場合は、我慢せず整形外科の受診を検討する
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